会社が民事再生になったときの従業員の立場

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倒産は清算型と再建型に別れる

会社が倒産した場合、たいていは、破産を意味しています。破産になった会社はすべての資産を清算し、従業員は全員解雇となります。そして、清算した資産で従業員の給料を支払い、その後に残ったお金を債権者に分配して会社は消滅することになります。

そうならないで、会社を再建することを前提とした倒産も有ります。それは、「民事再生」というものです。民事再生の場合は、従業員の雇用は継続されます。

民事再生を法律的に詳しく知りたい方は、弁護士事務所や司法書士事務所が書いているブログを参照されることをおすすめします。

このブログでは、私が実際に勤務していた会社が民事再生になった経験をもとに、民事再生を行った会社の中は、どのように展開するのか、また、外注先や仕入先、顧客との関係は、どのように変化していくのかなどを、リアルにお話ししていきたいと思っています。

ですから、今、民事再生を考えている経営者や役員の人たち、または、勤務先が民事再生になって、これからどうしたら良いか悩んでいる人たちの参考になればと考えています。

民事再生になったときの私の立場

人間はみな平等です。しかし、公平ではありません。自分の勤める会社が倒産してみると、まさにこのことを実感します。

民事再生当時の私の会社内での立場ですが、子会社の取締役工場長でした。したがって、親会社の役員や部課長ほどには情報が入って来ませんでしたが、それでも実質子会社のトップでしたので、一般社員に比べれば、早めに情報が入って来たという立場でした。

私の勤務していた会社は、親会社と二つの子会社が、いっしょに民事再生を申請するという形でした。

破産ですと、会社は即日閉じてしまって、従業員も即日解雇という形になります。社員が出勤してみたら、玄関に貼り紙が有って、カギがかかっているという状態が多いでしょう。

しかし、民事再生ですと、会社は継続しますから、民事再生の申請後も、社員は出勤することになります。

仕入先や外注先に対しては、支払いはストップしますし、過去に発行済みの手形の決済もしません。

そうなれば、外注先や仕入先が、会社に押し掛けてくることになります。そして、支払はどうなるんだとか、今後はどうするのか、などと質問攻めに合うことになります。

当然そうなりますよね。なにしろ、一生懸命に仕事をしたのにお金が支払われないのですから、怒るのも無理有りません。

民事再生を裁判所に申し立てる日とは

私の会社は月末(31日)が支払日でした。そのため、その前日である30日に裁判所に民事再生の申立てをしました。そして、31日の支払いはしないことになります。

仕入先や外注先の会社の中でも、資金繰りが楽ではない会社にとって、とても厳しいことです。31日に支払ってもらったお金を、自社の支払いに充てていたり、場合によっては、従業員の給料に当てていたりする会社も多いわけです。ところが突然、明日の支払いはしません、という連絡が来るのですから、たまったものではない、となるでしょう。

私の会社は、裁判所に民事再生を申請し、受理された旨を記載したFAXを、30日の夕方から、すべての取引先に送信しました。そして、FAXを送信した直後から、電話が鳴り続けました。近くの取引先の中には、慌ててやってくるところも有りました。電話及び来客対応担当を事前に決めていて、事務の女性などではなく、役員や部課長が対応しました。すべての来客や電話対応が終了したのは、夜の十時を過ぎていました。

なにしろ、民事再生ですから、会社が継続するのが目的です。そのためには、ここでは丁寧な対応を心掛けなければなりません。

民事再生はそれなりの期間を取って準備するもの

そもそも、民事再生というものは、それなりに期間を取って準備するものです。弁護士に相談したり、資金繰りを考えたりするので、少なくとも経営者自身は、実行の半年前には決断しているものです。

ただ、その時は、民事再生を視野に入れながらも、なんとか借り入れなどで倒産せずに進むことはできないものかと、じたばたするのは間違いありません。たいていの中小企業は、銀行借り入れにおいては、代表取締役が個人保証をしているものです。場合によっては、役員全員が個人保証している場合も有ります。

民事再生でも破産でも、個人保証をしている人たちは、資産を差し押さえられるわけですから、経営者や役員は、個人としても人生設計が大きく狂うことになります。

私が勤務していた会社も、民事再生申請予定日に近い日まで、社長や専務たちは、どこかから借り入れができないかと、いろいろなところを回っていました。

私が民事再生を申請する予定だと聞かされたのは、申立て予定日のおよそ2か月前でした。私自身も非常にショックを受けた記憶が有ります。私は子会社の役員でしたので、個人保証はしていませんでしたが、私には、高校生と大学生の子供がいたので、ちょうどお金がかかる時期でした。ですから、会社の動向も心配でしたが、自分自身の身の振り方をどうするか、悩みました。

民事再生の計画を知りながら仕入先と取引する苦悩

事前に民事再生の予定を知ってしまうと、仕入先や外注先との対応に、とても心を痛めることになります。今、盛んに注文しているものの代金は、民事再生によって支払われなくなるのだと分かっていながら、知らない振りをして注文し続けなければならないのです。

私の会社は製造業でしたので、短納期の製品を製造するときは、場合によっては外注先に残業や休日出勤をお願いしなければなりません。しかし、そうやって頑張ってもらった分の代金は、結果的に支払われないことになるのですから、本当に、申し訳ないでは済まされない話です。

そうかといって、外注先や仕入先に注文しなければ、お客様から頂いた注文の商品を作ることが出来ません。そうなれば、お客様に迷惑をかけることになってしまいます。

私の気持ちとしては、早く民事再生の申立ての日が来て欲しい、そうすれば、隠していることに悩まなくても良くなるのだ、などと考えていました。

いよいよ民事再生申し立ての当日が来る

毎日の業務に流されているうちに、民事再生申立ての日がやって来ます。そうなると、今度は、外注先や仕入先に対して、お金は払っていないけれども、これからも、これまで通り仕事のお付き合いをしてくださいと、お願いして回らなければなりません。

基本的に、民事再生を申し立てた日までの分は、後で、裁判所の決定が下りてから支払います(全額ではありません)。そして、今日からの注文分は、きちんと現金で支払いますから、これからも取引をお願いします、と言って回るわけです。

これはなかなか精神的に苦しい仕事でした。しかし、もう取引きしたくない、と言われたら、せっかく今後も会社を継続しようとしているのに、仕事が出来なくなってしまいます。代わりの仕入れ先を見つけようと思っても、潰れたてほやほやの会社と取引してくれる仕入先が見つかるとは思えません。ですから、なんとかお願いします、と言って、拝み倒して継続してもらうという感じでした。

民事再生がスタートしてから、社内や社外がどのように展開していくのかは、また、次のブログでお話ししていきたいと思います。

なお、民事再生の準備から、実際に申し立てから終結までの流れを具体的に解説したブログ、「民事再生の意味と申立て方法」も用意していますので、よろしければご参照ください。

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