スポンサーは民事再生成功の重要ポイント

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スポンサー候補の登場

スポンサーを付けるタイプの民事再生を選択した場合、スポンサーはどのように決まって行くのでしょうか。今回は、スポンサー募集から、スポンサーが決まって行くまでの過程をお話ししたいと思います。

まず、スポンサーを募集するためには、M&Aの仲介専門会社と契約することが手っ取り早い方法でしょう。
当社が依頼したM&Aの仲介専門会社が、スポンサー候補を募集すると、当社のスポンサーになることを検討してみたい、と名乗りを上げてくれた会社が何社か出てきます。

これは、あくまでも検討したい、ということであって、積極的にスポンサーになりたいという段階ではありません。

民事再生の申立てをして、1か月が過ぎる頃になると、M&Aの仲介専門会社が募集したスポンサー候補の会社が出そろいます。私が勤めていた会社でも、十社以上の候補が集まりました。

候補の会社は、それぞれに、結構、温度差が有ります。積極的に調査して、内容が良ければスポンサーになりたいと考えている会社も有れば、とりあえず名乗りを上げて、どんな会社か調査だけはしてみたい、という会社も有ります。

決定のポイントは、デューデリジェンス

いずれにしても、当社は、スポンサー候補に名乗りを上げた会社から、デューデリジェンスを受けることになります。

デューデリジェンスとは、民事再生をした会社が、買収するにふさわしい会社かどうかを調査することです。それは、財務面や不動産などの資産状況、営業面や顧客の内容、もし製造業であれば、工場の品質管理のレベルや状況など、多角的に全体を調査することになります。

スポンサーになるということは、当社を買い取るという意味になります。ですから、投資して大丈夫なのか、お金を出すだけの効果は有るのか、といったことを調べます。

民事再生を申し立てるということは、どこかで経営に失敗しているということでも有ります。ですから、どこをどう治せば良くなるのか、を見極めなければなりません。

扱っている商品が時代遅れだとか、人件費がかかりすぎているかなど、問題点を洗い出して、そこに自社が入ることによって、利益の出せる会社になるのかどうかを判断しなければなりません。例えば、スポンサーになる会社が、もっとレベルが高い製造のノウハウを持っているとか、新しい見込み客を持っているというような、プラスアルファ出来るものが有るスポンサーなら、最適といえます。

一方、スポンサー候補が同業者で、当社を1工場として使いたいという考えなのであれば、営業的な面よりも、技術面や設備面主体のデューデリジェンスになるでしょう。

その他、工場敷地が薬品などで汚染されていないかとか、法律的に許認可の問題を抱えていないかなどもチェックポイントになるでしょう。

さまざまな視点からデューデリジェンスが行われて、本当にスポンサーになって良いかどうかが判断されることになります。

スポンサー候補の会社の対応について

スポンサー候補の会社がデューデリジェンスに訪れる際、たいていの場合、チームを組んでやって来ます。経営状態を見る人、営業体制や顧客情報などを確認する人、財務や人事をチェックする人、工場の設備や技術レベルを見る人、最低でもこれくらいの人員体制でやって来ます。場合によっては、ここに税理士がプラスされていたりします。

デューデリジェンスの日程は、たいていは、2日間くらいをかけて確認します。

こちら側の対応もなかなか大変です。工場案内をしたり、帳簿などの資料をそろえたりが必要です。

私は工場長でしたが、それぞれの設備の細かいことまで知っているわけではありませんでしたので、各職場長はその期間は外出禁止で、質問されてもすぐに答えられるような体制で挑んでいました。

もちろん、総務、営業、経理の責任者も、いつ質問に呼ばれても良いように、常に待機状態でいました。

このような体制で、十社以上のスポンサー候補の会社に対応するのですから、こちらの疲労感も半端ない感じでした。しかし、いずれかの会社にはスポンサーになってもらわなければ民事再生が成立しないわけですから、こちらは精いっぱいの対応をしたつもりです。

毎日のように、入れ替わりでやってくるスポンサー候補に対応していましたが、およそ1カ月もするとそれも落ち着きました。デューデリジェンスが行われている間は気持ちが張っていましたが、ひと段落すると、ものすごい疲労感に襲われました。

スポンサー候補が絞られる

デューデリジェンスが一段落して、1ヶ月ほど経つと、スポンサー候補となる会社が、絞られてきます。

辞退する会社も有りますし、当社を買いたい金額を、それぞれの候補に提示してもらうのですが、その金額がほかの候補に比べて極端に安い場合は、M&Aの仲介会社の方から、候補として残るためには、これ以上は必要、というような話をするらしく、金額面で合わずに辞退する会社も有りました。

私が勤める会社の場合は、3社に絞られました。3社とも、前向きに、ぜひスポンサーになりたいという意思を表明してくれた会社です。

残念ながら、デューデリジェンスを受けた印象から、私が、この会社がいいな、と思っていた会社は、辞退されました。

残った3社は、いずれも商社でした。私が勤める会社は、電子部品の製造メーカーだったのですが、残った3社は、電子部品関連を販売する商社でした。商社というのは、メーカー部門を持ちたいという憧れが有るのでしょうか。

スポンサーが決まれば、民事再生はほぼ成立する

スポンサー候補が、買収したお金は、債権者への弁済金としてすべて使われます。3社が提示した買収金額は、弁済金に充当した場合、恐らく、債権者に納得してもらえそうな金額でした。

それを見て、どこに決まっても、民事再生が成立しそうな見通しが立ったので、私はホッとしました。

買収金額は、とにかく債権者に対する弁済が、最も高くなるように、というのが一番の目的ですから、ここから先は、担当弁護士が、3社を競わせて、少しでも金額を吊り上げようとしていました。

そして、やがてスポンサーが決まって行きます。

当社の意思とは無関係にスポンサーが決まります

3社が残ったスポンサー候補ですが、どこに決めるかは、当社の要望などは無関係です。要は、どこが一番高く買ってくれるか、ということになります。

民事再生になった会社を、スポンサーが買収して、その買収金額で、民事再生によって支払いをしなかった債務を、どれだけ多く返せるか、ということによって、裁判所が判断することになります。

スポンサーにとってのメリット

私の勤める会社が、最終的に買収された金額は、およそ3億円でした。潰れた会社を買収するには、なかなか高い金額だと思われるかもしれません。

しかし、私が勤める会社と同じような会社を、土地建物の手配から、設備の購入なども含めて、一から作ったと仮定したら、おそらく、15億円から20億円くらいは必要だと思います。ですから、民事再生になった会社を買うということは、ある意味、お買い得と言えるでしょう。

買収したスポンサーは、当社を買収することによって、自社の業績をもっと伸ばしたい、という思惑でスポンサーになっているわけです。

ですから、買収された会社側は、従来通りの仕事をそのまま継続するということは、許されない場合が多いと思います。 そういう意味では、買収された会社は、会社が継続する点は良かった点ですが、大きな試練が待ち受けているともいえるのです。

私が勤めていた会社も、決定したスポンサーの意向が強く反映され、会社も顧客も、大きく揺れ動くことになりました。

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