ジャパンディスプレイに見る、日本の電子企業国策化の失敗

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ジャパンディスプレイの特殊性

株式会社ジャパンディスプレイは、日本の大手電機メーカーの液晶パネル部門を統合してできた、国策企業だ。もとをただせば、日立、ソニー、東芝、三洋、エプソン、トヨタ、パナソニックという、そうそうたる大手企業の液晶部門を集めた会社である。

2012年にスタートしたジャパンディスプレイは、設立当初から赤字続きとなっていた。液晶パネルがすでに成熟した市場となっており、しかも、新製品を開発して量産を立ち上げるためには莫大な投資が必要な業界であったために、当初から資金難と言われていた。

しかも、多くの企業の統合によってできた経緯から、工場の統廃合やリストラも出来ない状態が続いた。

株式会社ジャパンディスプレイはこの先いったいどうなるんだろう、というのが多くの人の思いではないでしょうか。

生かされているだけの企業

生産の内容はと言えば、スマホ向けの小型液晶が高いシェアを持っていた。特にiphone向けが生産の5割を超えており、極端に依存している状態となっている。

そうは言っても、当社が手掛けているのは液晶パネルのため、有機EL化が進むiphoneにおいては、ジャパンディスプレイ製の液晶パネルを使うのは、SEなどの安価な機種のみとなっている。

現状は、アップルの下請け企業ともいえる内容でありながら、有機ELの生産計画が無かったのだから、アップルでのシェアが落ちて行くことが確実な状況となっている。そういう意味では、もはや企業としては死に体ともいえる。

技術の進歩が激しい電子業界においては、常に開発投資が求められるが、当社においては、開発投資どころか、常に運転資金の需要に苦労をしているという状態だ。

2024年6月20日現在の当社の株価は15円となっている。一般的な民間企業であれば、危険水域とも言える株価である。むしろなぜ潰れないのか不思議ともいえるのだ。その答えは国策企業だから、ということになるのだが、この株価は、まさに当社の置かれた状況を映していると言えるだろう。ある意味、停滞する日本の象徴のような企業となっている。

アップルの下請け企業の未来は

遅まきながら、2019年に有機ELの量産製造を開始した。そして、中国・韓国の有機ELメーカーの台頭により、液晶の需要は回復しないとみて、白山工場を停止している。

当社の一番の問題点は、iphoneへの売上比率が極端に高いことだろう。アップルの下請け企業を、日本の国の税金で運営しているという、非常にゆがんだ構造となっているのだ。しかも、一民間民間企業であれば、とっくに潰れている状態でありながら、国の税金で生かされているという状態だ。さらにゆがんでいるのは、そのような状態でありながら、社員の平均年収は618万円で、日本のサラリーマンの平均年収である433万円を大きく上回っているのだ。

ルネサスエレクトロニクスの場合

ジャパンディスプレイが死に体の状態であるのに対し、同じ電子関連の国策会社である、ルネサスエレクトロニクスは、何とか利益を出して、踏みとどまっている。

2010年、旧ルネサスとNECエレクトロニクスが統合してルネサスエレクトロニクスが発足した。当初は、1000億円規模の赤字企業であり、2013年には産業革新機構からの資金を受けて、実質の国営化となった。ルネサスエレクトロニクスが初めて黒字化したのが、2014年であるが、これはリストラを繰り返して達成したものだった。

しかし、これ以降、海外メーカーの買収を手掛けるなど、積極的な攻めの姿勢を見せている。

製品内容としては、立ち上げ当初はゲームや携帯電話市場向けを積極的に生産していたが、スマホ市場への参入に失敗したことも有り、現在は車載向けが中心となっている。

ただ、車載向けは最先端のものを要求していないことから、技術的に遅れていく懸念が有る。

ルネサスエレクトロニクスの2024年6月20日現在の株価は、3128円を示している。曲がりなりにも黒字を出している現状が評価されているのであろう。

トヨタの事情

ルネサスエレクトロニクスは、ジャパンディスプレイのように、大半がiphoneの廉価版向けという極端なものではないが、それでも、大半が車載向けであり、しかも国内の自動車メーカー向けが6割を占める現状は、顧客がかなり絞られており、場合によっては大きく売り上げを落とす可能性も無きにしもあらずだ。

特にルネサスエレクトロニクスの場合は、トヨタが車載用プロセッサの供給を海外メーカーに握られることは避けたいという強い意向によって、産業革新機構の傘下になったという事情もあり、やはり一民間企業の下請けとなった企業を国が資金を出して運営するという形になってしまっている。

国策電子企業の進む道とは

ジャパンディスプレイもルネサスエレクトロニクスも、その業種として、一民間企業では抱えられないほどの設備投資資金が必要となっている。そのためにばらけていた各社を統合して、産業革新機構が資金を出していることを考えると、ただ運転資金を出すだけではなく、先端の技術開発を先導して、ふたたび世界の電子市場を日本が引っ張れるような構想を展開して欲しいものだ。

もし、それが出来ないようであれば、特にジャパンディスプレについて言えば、アップルというアメリカの企業の下請けを日本の税金で運営することは、そろそろ終了にするべきではないだろうか

国策企業の一つであるルネサスエレクトロニクス誕生の裏側に、現在の半導体不足の要因が潜んでいることを記載した、「なぜ世界は半導体不足になったのか、その原因は?」も合わせてご参照いただければ幸いです。

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