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ISOは、会社を運営するうえで、無くてはならないものになっています。特に製造業や製造業に品物を納入する商社は、ISOを取得していないと、取引先として認めてもらえないという状況です。
ISOが日本企業に定着した理由
ISOとは、日本語では、国際標準化機構と訳されます。国際的に標準化した規格に基づいて仕事を進めているかどうかを審査、認証するものです。
ISOの中でもポピュラーな規格といえば、品質のISO9001、環境のISO14001ですが、他にも、情報セキュリティのISO27001や食品安全のISO22000など、さまざまな規格が有ります。
ISOが正式に発足したのは、1947年ですから、それなりに歴史が有ります。日本が加盟したのは1952年ですので、日本としても70年ほどの歴史が有ることになります。
しかし、日本の各企業がISOに熱心になり始めたのは、2000年ころからではないでしょうか。当時、建設省(現在の国土交通省)が建設業界に対して、ISO9001の取得を強く推奨したことがブームの始まりです。
建設業界は、元受けである大企業を頂点にして、下請け、孫請けと連なっている業界ですから、元受けから孫請けまで、雪崩を打ってISO取得の大ブームが起きました。
その流れは電子業界などの製造業に波及し、ISOを取得しないと注文がもらえなくなるという話しが広まり、2000年代はISO取得のバブルが発生した状態でした。
この時期というのは、日本の製造業の中国進出ラッシュが起こり、国内の空洞化が叫ばれ始めた頃と一致しています。
ISO取得バブルの実態
大企業のISO取得ラッシュの波と中小企業の取得ラッシュの波とは、それほど時期的な違いが有りません。ただ、取得の目的は大きく異なっているんです。
大企業は官公庁から受注するためにISO取得を進めました。
一方、中小企業の方は、仕事の発注先である大企業から、「ISOを取っていないと、今後は仕事が出せなくなるよ」という脅しのようなことを言われ、慌てて取得に走ったというケースが多いと思われます。
ISOというのは、品質の安定を目指すために、社内の各部署がやるべきルールを決めるということです。その中で、購買部門のルールの中で、「外注先などの外部業者を使う場合は、自社の要求にこたえられる内容の会社かどうかを判断してから使わなければならない」という規定が有ります。
どのような根拠で判断するかは、それぞれの会社が決めることですが、たいていの会社では、「ISO認証を取得している場合は、それを確認することによって、自社の要求にこたえられる外部業者であると判断する」というような取り決めにしているケースが多いのです。
そうなれば、当然、ISOを取得していないと発注できないよ、という話しになるわけです。ISOを持たない外部業者と取引するためには、現地へ行って、内容が自社の要求を満たすかを確認しなければならないため、面倒だということになります。
中小企業にまでISO取得ラッシュが起こったのは、この点が大きかったのだと思います。
しかし、官公庁が、突然ISOを持ち出したのはなぜでしょうか?そもそもISOは国際的に評価を標準化しようという趣旨の規格です。官公庁は基本的に国内での発注ですから、何となく違和感を感じてしまいます。
私が勤務していた電子部品製造の会社も、このころにISO9001を取得したのですが、審査員に建設業界出身者が多く、なぜなのだろうと思っていましたが、こういう事情が有ったわけです。

ISOの取得ラッシュが起きた時代
官公庁がISOを持ち出したのは2000年代の初めですが、このころの日本はどうなっていたのでしょうか。1990年から2000年にかけてのころ、日本の半導体が世界を席巻していました。日本の半導体が無ければ、ジェット戦闘機も宇宙ロケットも作れない、と言われた時代です。輸出産業は半導体だけではなく、精密機械や車や家電なども元気でした。
日本の輸出産業は好調で、大幅な貿易黒字を計上していました。そして、アメリカとは貿易摩擦を起こして、叩かれていたのがちょうどこの時期です。
以上の点を押さえた上で、いったん話を変えます。
ISOの使い方の推移
最初は官公庁の指示によって、雪崩を打つように取得ラッシュが始まったのですが、取得ブームが落ち着いてくると、官公庁とは別に、民間企業同士の中でのISOの使い方が変わりました。
まず、大手企業が中小企業に仕事を発注する場合、ISOを取得済みであることが絶対条件のようになって行きました。一番の理由は、ロット管理、製造履歴管理が必ず有るということだと思います。
製造業であれば、万一、不具合品が発生した場合、不具合が起こりうる範囲を特定することが要求されます。ISOに沿って業務を行っていれば、ここのところは間違いなくやっているので大丈夫となるわけです。
大企業が下請け企業に要求するISOの中身とは
いつの間にか、発注者がもっとも注目する点が、不具合時の履歴問題になっていると言えます。作業手順がきちんと定められていて、しかも、不具合が起きても履歴がきちんと追えるシステムが有ることが重要とみなされています。
そういう意味で、現在の日本の会社においては、ISOは下請け管理システムのようになっているわけです。
ISOの基づく作業とは、製造工程においては、手順書通りに、今日は昨日と同じことを、明日は今日と同じことをしなければなりません。
例えば、現場でちょっとした工夫で歩留まりを改善できる方法を考えたとします。それを取り入れるためには、改善提案を出して、上司に認められて、実際に検証して、良ければ手順書を書き換えて、それから採用するという流れになります。
もう面倒だから今まで通りでいいや、となりますよね。

なぜISOが改善活動を阻害したか
今日も明日も明後日も、同じことをきっちりやるシステムに未来は有るのか? と思ったりします。
日本の製造業の発展は、現場において、日々の改善が大きな要素でした。ISOは、この改善活動を非常にやりにくくしました。
高度成長期のように、大企業がたっぷりと仕事を持っていて、そこにぶら下がってさえいれば、仕事の確保は心配しなくてよい、という状況であれば、大企業に言われるとおりに、毎日同じことをやっていれば良いのでしょうが、今では、大企業に昔の面影は有りません。
その中で毎日同じことをやっている間に、世界は毎日進歩していて、気が付けば先端技術はアメリカや中国が担い、日本は世界の下請け工場の位置になってしまいました。
しかも、最近の日本は、経済的には、先進国から脱落しつつあります。

日本は技術開発の国から製造下請けの国へ転落した
ここで、冒頭にお話ししたことを思い出してください。ISOを最初に推進したのは官公庁でした。国際規格をなぜか官公庁が持ち出したのです。
半導体や電子機器などで世界の先端を走っていた日本を失速させるための手段として、ISOが使われたのではないでしょうか。
ISOを取得した企業の件数は、中国がダントツのトップですが、日本は世界の第4位です。アメリカやイギリスなどは、日本よりもずっと少ないのです。官公庁に対して外国から、何らかの力が働いたという推測が出来ると思います。 停滞している日本の現状を、失われた30年などと言いますが、その原因の一つがISOではないでしょうか。
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