漆塗り漆器の楽しみ方、魅力について

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漆塗りの産地について

日本の各地に漆塗りの産地が有ります。よく聞く名前としては、輪島塗や春慶塗、会津塗などでしょうか。
日本で一番生産されているのは輪島塗ですから、その名前を聞いたことがある人も多いことでしょう。

漆塗りそのものは、古くは縄文時代から有ったようですが、漆器の産地として作られるようになったのは、安土桃山時代頃から始まったところが多いようです。

漆器と言われて思い出すものと言えば、お膳やお椀、お盆などでしょうか。大きなものでは、重箱などもしばしば見かけると思います。
今回は、漆塗りの見かたや、その魅力について、書いていきます。

漆塗りは、塗りそのものの光沢が美しいのですが、そこに描かれた絵柄も素晴らしいものが多く有ります。
漆器の素材は木です。その多くは、ケヤキ、トチ、ヒノキなどが使われています。

漆器とは、木の器に漆の樹液を何度も塗り重ねたものです。漆は塗った後で硬化すると、耐水性はもとより、防腐性も高く、さらに酸やアルカリにも強いという性質が有ります。
さらに、殺菌や防虫の効果も有ります。

そのため、木は腐ったりかびたり、虫に食われたりして、劣化するものですが、漆を塗ることによって、耐久性が飛躍的に向上します。

その効果によって、江戸時代や明治時代の漆器が、現代までもきれいなままで残っているのです。

実は私の家にも江戸時代末期や明治時代の漆塗りの椀やお膳が残っていて、とてもきれいなままで保管されていました。

余談ですが、神社の天井などにも塗料として使われていることが多く有ります。古い神社が現代まで長持ちしている要因の一つでもあるようです。塗料の中で、日本の漆が最も優れているとする説も有るようです。それだけ、漆の耐久性は優れているということでしょう。

漆器の装飾

漆塗りのお椀やお膳などには、さまざまな装飾が施されています。
多いものは、蒔絵や沈金、沈黒などでしょうか。

蒔絵とは

漆塗りの重箱などには、非常に美しい蒔絵が施されているものが多く有ります。

その蒔絵を描く方法は、まず、漆の仕上げ塗りを終えた後、漆で絵を書きます、その上に色粉を蒔きます。そしてその上から透明の漆を塗って固めてから乾燥します。

色粉だけでなく、金粉、銀粉、さらには螺鈿(らでん、貝の装飾)などを蒔くことも多く、高級感が出ているものが多く有ります。

重箱などでは、例えば3段の重箱であれば、3段がそろって積み重ねた際に絵柄がそろう、というような蒔絵を施しているものも多く有り、大きさが大きくなるため、その美しさは格別です。

参考に輪島塗の茶台の写真を載せておきます。茶台とは、大きな茶托のようなものです。

輪島塗 茶台
茶台を上から見た様子 金の蒔絵

沈金、沈黒とは

漆塗りの仕上げを終えた後、塗った面を細いノミで模様をケガいていきます。そしてそこに、金粉を押し込んでいきます。

沈黒の場合は、ケガいた後に、黒漆を塗っていきます。

いずれの場合も、いったん塗りが完了した後にキズを付けていく作業なので、失敗が許されない作業となります。したがって、沈金、沈黒の技法は、高い技術をもった職人のみが出来る仕事となっています。

沈金、沈黒を施した器の写真を載せておきます。器の外側が沈黒で、蓋の内側に沈金が施されています。

蓋の内側です

釦(いっかけ)とは

お膳やお椀のふちに、金色や銀色のふちどりがされているものが多く有ります。この縁取りのことを釦(いっかけ)と言います。金であれば、漆を塗った後に金の粉を塗っていくというものです。

金の釦を金釦と呼んだりします。

釦(いっかけ)の例を参考に載せておきます(縁取りの部分です)

釦(いっかけ)の参考例(縁取りの金色部分)

製作者の印について

江戸時代や明治時代の漆器は、たいていの場合、注文して作ってもらう、いわゆる請負方式でした。
ここに載せた写真は、輪島塗のものですが、このような印を押した和紙の袋に入れて、さらに木箱に入れて納品されていました。

漆器の使い方

残念ながら、電子レンジは使えません。中が木ですので、木の中の水分に電子レンジが作用して、素材を痛めることになります。

また、飲めないほどの熱いお湯などを入れると、漆塗りの艶が損なわれる可能性が有るのでお勧めできません。もちろんお茶や味噌汁のような飲める温度のものは大丈夫です。

洗う際に、中性洗剤を使うことは問題ありません。ただし、たわしや固いスポンジでこすると艶が無くなってきますので、柔らかいスポンジなどやさしく洗うようにします。
漆器は、 ていねいに扱えば、100年使うことも出来るものですので、ぜひ、大切に、長く付き合っていただきたいと思います。

螺鈿について詳しく書いたブログ、「古美術で漆器に使われる螺鈿(らでん)の魅力について」も有りますので、螺鈿に興味のある方は、ぜひ覗いてみてください。

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